腐ってる

閉鎖的なオタクの生存記録

NOW HERE[感想]

 NOW HERE

NOW HERE (Holly NOVELS)

NOW HERE (Holly NOVELS)

 

BL小説の感想です。
 突然のネタバレ、BLが苦手な方は注意です。

 初木原音瀬先生です!人気作家さんなので気にはなっていたんですが
引っかかるカップリングが無かったので見送ってましたが……
どツボいものがあるじゃないですか〜( ̄ー ̄)ニヤリ

内容(「BOOK」データベースより)

朝目覚めると、福山の隣にみすぼらしい中年の男が眠っていた。酒に酔ってお持ち帰りしたらしい。見覚えのある顔、細い綺麗な指。…男はなんと、福山が勤める会社の経理部の部長・仁賀奈だった。仁賀奈は五十歳の今まで童貞で、女性は勿論男とも付き合つたことがないという。初心で化石のような男が新鮮で、福山は「年下の可愛い恋人」として付き合い始めるが…。

 福山は特定の人とは関係を深めないゲイで、常に割り切った関係を他人と持ち、一線を越えようとした人間には手酷く突き放すという、ゲスい男。といっても会社ではそれないりに同僚にはやさしい。
そんな男が、同じ会社の上司と関係を持った事で福山の人生が動き始めるんですが
この上司というのが、枯れた50歳の仁賀奈。

福山曰く「大気圏外」で「半世紀」。
結構酷い言われようです。
それに加え、仁賀奈はこの年まで女性と関係を持った事が無い「ハツモノ」。
福山とは親子ほどの年齢差です。

同じ会社なので、そのまま自然消滅というわけにもいかず、その事を福山の通うゲイバー「ジャニス」のレヴィに話すと「優しい別れ方」をしてあげてと言われ、遊びと称し仁賀奈を好きな男を演じるんですが
もう、なんと言っても前半の福山と後半の福山の圧倒的立ち位置の差が凄いんです。
じわじわと仁賀奈に夢中になっていく福山とそんな福山に連れ添うような仁賀奈…だと思って途中まで微笑ましかったんですが、福山、そしてきっと読者までもを転落させる出来事が。

そこで仁賀奈の狡さ、執念深さ、51という年齢まで何故女性との関係が無かったのかが明らかになります。
正直、今まで福山のしてきた事が酷いので因果応報だろうと思えるんですが、福山が仁賀奈への気持ちを気づいてからは福山を応援してる私がいた。
寧ろ仁賀奈の純粋な身勝手さ、優しさの履き違えに傷つき不安定になっていく福山が可哀相でイライラしてました(;´∀`)
仁賀奈が福山に突き放す言葉を言う度に私も心臓がたまらなく痛かった…。

ここまで登場人物の心境の変化をゆっくり丁寧な表現で描写されてるなんてあらすじを読んだ当初は思いもしなかった;
だから余計に感情移入して、あっという間に読み終えてしまった。

終盤に差し掛かり、福山が体調を崩しレヴィが看病に来てくれます。
もうこのシーンの福山の「素」がたまらなかったです。
仁賀奈が看病にやってきて、レヴィと鉢合わせし、突き放すような態度をとる福山。
だけどレヴィの指摘のおかげで、福山は仁賀奈にどうして見舞いに来たか問い詰めるんですが、そのシーンがレヴィ曰く「まるで子供みたいに全身で好きだと訴えていた」と表現されて、この表現がたまらなく私は好きでした。
あの福山が本当に好きになって焦がれた相手には「全身で好きだ」っていうんですよ。
最上級の好きの表現じゃないの?これ。
当初の福山じゃ考えられない、心からの言葉がたくさん出てくるこのシーンが一番好き。

この年齢差に、2人の温度差が徐々に変わる瞬間。
もう文章にずっとうっとりしていました。
木原先生の小説は、あともうひとつ「夜をわたる月の船」を購入したので近々読む予定です。「痛い」らしいです…ちょっと緊張しちゃいますね(笑)
先生の作品は、作品によって雰囲気が大きく違ったりしてるようなので、それがまた面白いですね。

NOWHEREは正に私の理想のオヤジ受けでした!そして
なんといっても福山のキャラですよね…最高……。

それでは(・・)/